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AIエージェントの作り方完全ガイド|Difyか自社開発か?失敗しない選定基準


AIエージェントを導入したい。でも、何から手をつければいいのか分からない。
そう足踏みしている間に、CopilotやGeminiといった対話型AIの利用で止まっていませんか?

本稿は、DXやマーケティング責任者が”今日から”行動を起こすことができる、ビジネスAIエージェントの構築ガイドです。7つのステップと選定基準を通じて、導入の判断と最初の一歩を明確にします。

業務の「生成AI活用」を阻む3つの壁

生成AI活用の要望と課題

多くの企業で、人手不足や業務の非効率性が課題になっています。
例えばマーケティング実務の現場では、戦略立案など本来やるべき業務に時間が割けない、また、営業の現場では社内の煩雑な処理でお客様に訪問する時間が減るなどの声を多く聞きます。
課題を克服するために生成AIを活用して業務を効率化したいという要望も多いのではないでしょうか。

ChatGPTやGeminiなどの汎用生成AIは、業務に早く取り入れられます。一方で、運用面では課題があります。

課題①コスト

汎用の生成AIは無料でも利用できます。しかし業務で本格的に活用しようとすると、利用回数や使えるAIモデルの制限などがあるため、有料版が必要になってきます。いずれの生成AIサービスも、料金は20~30ドル程度に設定されています(2026年2月現在)。

例えば社員数が1,000人の会社で社員全員用にライセンスを購入すると、月額で20,000~30,000ドル(約300~450万円)程度になり、コストが問題になってきます。全員がフル活用するわけではない現状を考慮すると、費用対効果の点でも負担感は大きいといえます。

課題②機密保持

生成AIに入力した情報は、生成AIツールを提供している企業に送信されます。送信された情報は、生成AIの学習に使われ、その結果、入力した人が予期しない形で生成AIからの回答として出力される可能性があります。ChatGPTやGeminiなどでは送信された情報を生成AIの学習に利用させないように設定することができますが、セキュリティの厳しい会社では利用が困難な場合もあるでしょう。

課題③生成AIを利用するための新たな手間

汎用の生成AIを業務で使う場合には、入力する情報を整えたり、生成AIと何度もやりとりしたりなど、事前準備や操作の工夫などの作業が発生します。

例えば、社員が生成AIを使って「各種規定を探して閲覧する」作業は次のようになります。

  1. 問い合わせたい内容に応じて、管轄する部門の規定を探す。
  2. 規定文書のPDFをPCにダウンロードする。
  3. ChatGPTやGeminiなどの生成AIを開く。
  4. 生成AIのチャットウィンドウで、規定文書を添付した上で、質問を入力する。
  5. 回答を得る。

人が資料を熟読して、関係する規定を探すよりは効率化できますが、生成AIを利用するための手間も発生してしまうため、大幅な効率化は難しいでしょう。

AIエージェントとは?

AIエージェントの定義

AIエージェントとは、与えられた目標を達成するために、状況を理解し、判断を行いながら自律的にタスクをこなすシステムです。
AIエージェントは、ソフトウェア開発の自動化、リサーチ業務の自動化などさまざまな分野で開発・活用が進められています。

汎用AIチャットとAIエージェントの共通点と違い

汎用AIチャットとAIエージェントの共通点は、「モデル」と呼ばれる生成AIの「頭脳」を利用して、知識を引き出したり、判断を自動化したりできる点です。

違いは、「頭脳」の使い方です。

汎用AIチャットは一問一答形式で、指示や情報を与えて回答を引き出します。指示や情報は人が集め、場合によっては加工してから生成AIに投入する必要があります。質問・回答を繰り返し行い、回答を引き出していく工夫が必要です。柔軟にやりとりできるため、理解を深めながら適切な回答を引き出せるというメリットはありますが、作業の手間がかかるという課題もあります。

AIエージェントは、「Xの場合はYを探して、Zの点も考慮して結果を出す」というような複雑なワークフローを組み、実行することで、すばやく、自動でタスクを完了できます。生成AIの「頭脳」に、社内にしかない独自の情報を参照させたり、今日の天気を調べるといった特定の機能を実行させることができます。

AIエージェントの特徴

AIエージェントの特徴は、自律性と知性です。自律性は、自ら判断してタスクを行う能力です。知性は、理解し、考え、判断する力です。AIエージェントが解決する課題の性質によって、自律性と知性の重みが変わってきます。

AIエージェントを自動化システムとして捉える場合は、自律性を重視して、人間の介入を減らして問題解決を目指します。知性を重視する場合、人間らしい振る舞いができるかが重要になります。

AIエージェントの「作り方」7ステップ

AIエージェントの構築は次の7つのステップで進めます。

1

ステップ目的とKPIを定義する

AIエージェントによって達成を目指す数値目標を設定します。

例えば、問い合わせ対応業務をAIエージェントで自動化する場合には、下記のような指標がKPIになります。

  • 顧客満足度
    • チャットの対応に顧客が満足した度合い(例:アンケートでの評価平均点)
  • 会話成功率
    • ユーザーの要求を正確に理解し、満足できる回答を提供できた割合(目標達成会話数 ÷ 総会話数)
  • オペレーター転送阻止率
    • AIチャットボットだけで解決し、人間オペレーターにエスカレーションしなかった比率。(チャットボットで完結した問い合わせ数÷総問い合わせ数)

2

ステップ業務プロセスの整理とAIエージェントの理想の挙動の設計

業務プロセスを整理します。その業務に必要な知識や業務完了の条件などを言語化します。その業務プロセスの中でAIエージェントに代替させる範囲を特定し、業務のゴールから逆算して「どのような思考プロセスで行動すべきか」という理想の挙動を設計します。

3

ステップ開発手法・ツールの選定

要件と体制に合わせて最適な実装方法やツールを選びます。次節で詳しく解説します。

4

ステップナレッジ設計

AIエージェントがタスクを実行するためにどのようなナレッジが必要かを決め、業務知識を文章化するなどデータ化します。RAGなど、AIエージェントに情報を与える方法も決定します。

5

ステップワークフロー設計とプロンプトエンジニアリング

AIエージェントの処理の流れを組み立てます。Web検索などのツールとの連携、条件による分岐、通知などのワークフローを設計します。

期待する結果が得られるように、プロンプトを開発・改善します。

6

ステップ評価する

AIエージェントの行動の精度向上と業務成果の改善のため、ユーザーによる評価やエラーの分析などを行います。出てきた課題は優先順位を決めて対策していきます。

7

ステップ運用

AIエージェントの挙動を監視し、ログ分析を行います。プロンプト改善・データ更新を継続的に行います。

開発手法・ツールの選定

AIエージェントを構成する技術要素

AIエージェントの仕組みを技術的な観点で解説します。

AIエージェントは、ユーザー接点、オーケストレーション、ナレッジ、LLMモデル、LLMOpsという5つの階層で構成されます。それぞれの役割と、代表的な実装方法・ツールは次の通りです。

  • ユーザー接点
    • ユーザーが入力したり、ユーザーに結果を伝えたりといったように、AIエージェントとユーザーのやりとりの窓口となる部分です。LINEなどのチャットにAIエージェントを組み込むなどします。
  • オーケストレーション
    • AIエージェント全体の動きを制御する司令塔の役割です。例えばユーザーからの入力を受け取ってLLM(生成AI)に問い合わせたり、ナレッジからデータを取り出したりなどを行います。オーケストレーションツールの一つとして注目されているサービスにDifyがあります。
  • ナレッジ
    • LLM(生成AI)は人間を超える知識を持つようになってきていますが、社内のデータなど独自のデータは持ち合わせていません。そのようなデータを管理・提供するのがナレッジの役割です。ナレッジを提供する方法としては、外部から必要な情報を都度検索する技術であるRAGや、プロンプトに直接情報を与える手法(ロングコンテキスト)などがあります。
  • LLMモデル
    • AIエージェントの頭脳の部分で、理解・推論・判断などエージェントの中枢機能を担います。もしこれがなければAIエージェントは成り立ちません。LLMモデルとしては、汎用AIサービスでも利用できるOpenAI (GPT), Gemini, Claudeが有名です。
  • LLMOps
    • 動かした後の品質管理を担います。検査、監視、コスト・遅延分析などを行います。「回答の精度は十分か?」「ハルシネーション(嘘)をついていないか?」「トークン課金はいくらかかったか?」などを追跡・デバッグするためのツールです。
技術階層

役割

代表的な実装方法・ツール

ユーザー接点ユーザーインターフェースSlack, LINE, Webサイト
オーケストレーションワークフローの組み立て・制御① LLMアプリ開発プラットフォーム(Difyなど)
② フルスクラッチ開発 (Pythonなど)
③ クラウドエージェント (Azure AI Agentなど)

ナレッジ

独自データの提供RAG(ベクトルDB:Pinecone等)
プロンプトに情報を与えるロングコンテキスト
LLMモデル頭脳OpenAI (GPT), Gemini, Claude

LLMOps

検査・監視LangSmith, Langfuse
AIエージェントを構成する技術要素

なおAIエージェントを構成するこれら技術要素のことを、AIエージェントの「テックスタック(技術スタック)」と呼ぶこともあります。

3つの開発手法の比較

5階層の技術要素を組み合わせてAIエージェントとして完成させるための方法は3つあります。

① LLMアプリ開発プラットフォーム(Difyなど)

シンプルなものであれば、わずか数分という超高速でAIエージェントを作れます。プログラミングスキルがいらないので業務を理解している当事者が開発できます。開発後の運用管理も簡単です。

ユーザーインターフェースの自由度が限られたり、非常に複雑なワークフローは苦手であるなどの制約はありますが、プログラミングのスキルがなくても、短期間にAIエージェントを作って検証できるのが強みです。

  • こんな人向け
    • 本番運用はさておき、AIエージェントを業務で使えるかを1~2週間以内で検証したい。

② フルスクラッチ開発 (Pythonなど)

自由に開発できるので完全なカスタマイズが可能です。最先端のアルゴリズムも試せます。

プログラミングのスキルが必要です。プログラムの「ライブラリ」の更新頻度が極めて高いなどの理由から、運用時のメンテナンスの負担が大きくなります。

  • こんな人向け
    • 独自ロジック・独自UI・独自最適化を作り込みたい。

③ クラウドエージェント (Azure AI Agentなど)

マイクロソフトやAmazonなど大手のクラウド企業が、ツール接続・監視連携・ID/ネットワーク統合などを保証してくれるので、セキュリティや安定性が担保されたシステムを構築できます。クラウドインフラの知識が必要です。

  • こんな人向け
    • 金融・公共・医療など、極めて高いセキュリティを求める企業で、大手クラウド企業にクラウド環境での運用責任を肩代わりして欲しい。
項目

LLMアプリ開発プラットフォーム(Difyなど)

フルスクラッチ開発 (Pythonなど)

クラウドエージェント (Azure AI Agentなど)

開発スピード
(数分~)

(数か月~)

(数週間〜)
スキル要件
(非エンジニアでも可)

(プログラミングスキル)

(クラウドインフラ知識)

自由度

セキュリティ

保守コスト

主な対象者

企画担当・DX推進担当専門エンジニア・研究者情シス責任者
3つの開発手法の比較

3手法の使い分け

これら3つの手法は、自社にとってどれかが必ず優れているという「究極の選択」ではなく、AIエージェントの検討・開発段階に応じて使い分けるもの、と考えた方がよいでしょう。

例えばプロジェクトの各段階で次のようなステップを踏むと、AIエージェント導入の成功の確率も高まります。

  • DifyなどのLLMアプリ開発プラットフォームで、「こんなことができる」というイメージを超高速で検証し、社内で共有する。
  • 特殊な処理や高度なカスタマイズが必要なら、フルスクラッチ開発も組み合わせて作り込む。
  • 全社導入・本番運用となった時に、セキュリティや安定性を考慮してクラウドエージェント(Azure AI Agentなど)に移行・統合する。

「似て非なる」ツールとの比較

“AIエージェント”という言葉は、何らかの形でAIを活用しているという広い意味で使われることがあります。その文脈では、ターゲット層や役割が大きく異なる製品群もAIエージェントと捉えられる場合があります。ここではそのような「似て非なる」ツールとLLMアプリ開発プラットフォームの違いを簡単にご紹介します。

n8n / Make / Zapierなどの連携自動化ツール

既存SaaS同士の連携自動化のツールです。一部AI機能も搭載されていますが、あくまでも多様なアプリとの連携と自動化が主な役割です。

Intercom, Zendeskなどのカスタマーサポートツール

企業が顧客とのやり取りを効率化・統合するクラウド型のカスタマーサポートツールです。顧客対応という用途に最適化されている製品です。

DifyなどのLLMアプリ開発プラットフォーム

生成AIの活用に特化しており、また、どのようなアプリケーションでも開発できる基盤という位置づけです。

LLMアプリ開発プラットフォームツールの比較

LLMアプリ開発プラットフォームには複数のツールがあります。主なものを紹介します。

Coze(コーズ)

ノーコードでAIチャットボットを素早く作成できます。ユーザーとの対話を記憶できる機能があります。運営元がByteDance(TikTokの親会社)ということもあり、SNSとスムーズに連携できます。プラグイン(外部サービス連携)も豊富です。

Dify(ディフィ)<クラウド版>

ノーコードで、生成AI(LLM)を組み込んだアプリケーションを、スピーディーに作成できます。特にRAG(データ検索)を簡単に構築できるのが特徴です。
Difyは無料で利用できます。ただし無料版はアプリを作成・運用する側のユーザー数が制限されていたり、作成できるアプリ数が制限されていたりするので、本格的な利用を行うためには、有料プランの検討が必要になってくるでしょう。
チャットのユーザーインターフェース(レイアウトなど)が基本的には固定されている、利用規約では一つの管理者が複数のテナント向けにサービスを提供することが制限されているという点は留意が必要です。

Dify(ディフィ)<セルフホスト版>

セルフホスト版は、データを自分がホスティングする環境に閉じて利用することができます。作成したアプリケーションへの外部からの予期せぬアクセスや、社内ナレッジのデータ漏えいのリスクを避けられます。運用管理(アップデート適用など)は利用者が行う必要があります。
ソフトウェアの利用料はかかりません。ただし、大規模・商用で高度な管理機能を求める場合は、有料のEnterprise版が必要になる場合もあります。
これ以外の点、特にアプリの機能面はクラウド版と概ね同じです。(運用責任・セキュリティ統制・サポート・コスト構造などはクラウド版とセルフホスト版で異なります。)

Flowise(フロウイズ) / LangFlow(ラングフロー)

Flowise / LangFlowは「LangChain」というプログラムライブラリを、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)で操作できるようにしたものです。開発の自由度が高い点が特徴です。「処理の流れ(ロジック)」を作るためのツールであり、一般ユーザーが使う「チャット画面」は別途用意する必要があります。

項目

Coze

Dify<クラウド版>

Dify<セルフホスト版>

Flowise / LangFlow

主な用途SNS・チャットボット業務アプリ業務アプリ(秘匿データ活用)API(アプリの裏側の仕組み)
開発スピード
(数分~)

(数分~)

(数十分〜)

(数日〜)

スキル要件


(非エンジニアでも可)

(非エンジニアでも可)

(サーバー構築スキル)

(開発ロジックの知識)
UIの自由度

データ安全性

保守コスト

主な対象者

個人・SNS活用層企画担当・DX推進担当情シス・IT責任者エンジニア
LLMアプリ開発プラットフォームツールの比較

Difyの特徴

AIを組み込んだ業務アプリケーションを短期間にノーコードで開発したいという場合には、DifyはオープンソースのLLMアプリ開発プラットフォームとして、世界中で最も普及しているデファクトスタンダードです。ワークフローをトライ・アンド・エラーを繰り返しながら作成したり、RAGを試したりしたい場合にはとても魅力的な選択肢です。また、クラウド版とセルフホスト版が用意されているので、まずクラウド版で試作し、本格導入のタイミングでセルフホスト版へ移行することも可能です。

特にAIアプリが業務要件を満たせるかの初期検討(PoC)を行うという用途では、現場のアイデアを、現場で困っている本人が形にすることができるので、Difyは最適な選択肢だと言えるでしょう。

まとめ

AIエージェントは、人手不足や業務の非効率性の課題を解決するための、大きな武器になる存在です。

ただし重要なのは、「AIエージェントを導入すること」自体を目的にしないことです。導入の可否も含めて、7つのステップに沿って判断することをおすすめします。

成功させる鍵は、いきなり完璧を目指すのではなく、まずは「身近な課題の見える化」から一歩を踏み出すことにあります。Difyのようなノーコードツールを活用すれば、その一歩は想像以上に速く、低コストで実現可能です。

カスタマーワンのAIエージェント導入支援サービス

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執筆者

江成 太一

えなり たいいつ)

ソニー、日産自動車、MSDなどで、一貫してデジタルマーケティングに従事。
戦略立案から、企業Webサイト構築、SEO・検索広告・メールマーケティングなどのリード創出施策、インサイドセールス運営を実行。海外駐在も経験。

出典

  • 太田 真人他. 現場で活用するためのAIエージェント実践入門. 講談社, 2025
  • 吉田真吾他. コーディング不要で毎日の仕事が5倍速くなる!Difyで作る生成AIアプリ完全入門. 日経BP, 2025
  • イサヤマ セイタ. 【この1冊からはじめる】生成AIアプリ開発入門 Dify 徹底活用ガイド. SBクリエイティブ, 2025
  • にゃんた. ゼロからわかるDifyの教科書. 技術評論社, 2025


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