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生成AIはどんな業務に効く? 効果を最大化する「領域」と「方法」の選び方


生成AI活用の成否は「ツール選定」ではなく、生成AIを「どんな業務(Where)」に「どう使うか(How)」で決まります。期待する成果、用途、利用方法を明確にすることが重要です。

当コラムでは、生成AI導入のための第一歩として、生成AIを「どんな業務にどう使うか」という戦略作りについて解説します。

日本企業の課題

日本では多くの企業が、人手不足、業務の非効率性に頭を悩ませています。

日本の生産人口は1995年をピークに減少傾向が続き、2050年には、2020年と比べて26%少ない5540万人になると言われています。また日本の生産性は、OECD38カ国中26位と低い水準です。

これらの課題対策の”決め手”として生成AIが注目されています。

出典総務省. 情報通信白書, 令和7年版

生成AIのメリット・効果

生成AI導入の効果には、業務効率化、コスト削減、付加価値の向上の3つがあります。付加価値の向上とは、顧客体験の向上など、これまでになかった価値を、生成AIを活用して追加することです。

日本企業は米国企業に比べて、既存ビジネスの変革や新規ビジネスの創出のためのデジタル技術の活用が不十分です。逆に言うと、生成AI活用によって新規ビジネスなど新たな付加価値を想像する余地は大きいと言えます。

「業務効率化、コスト削減」など実務レベルで明らかな不足・不満だけでなく、顧客体験の向上など経営レベルでの付加価値を高める上での課題にも目を向けることで、生成AIの効果を最大化できます。

出典情報処理推進機構. DX白書, 2023

生成AIとは何か

生成AIとは、膨大なデータからルールやパターンを学び取り、それをもとにオリジナルのデータを生み出すことができるアプリケーションです。

生成AIは、与えられた文脈に基づき、次に来る単語を予測する仕組みで動いています。生成AIは確率を基に次に来る単語を予測して生成するため、「正しい」答えを知っているわけではありません。確率を基に予測するという仕組み上、生成AIの回答に間違いが含まれる可能性があるという点を理解しておくことはとても重要です。

生成AIは、どんな業務に、どう使えるのか?

適用領域 ~ どんな業務に使えるか?

生成AIの「適用領域」とは、事業活動のどこに生成AIを利用するかという利用場所のことです。適用領域の違いによって、生成AIの用途は「水平型(全社型)」と「垂直型(機能特化型)」があります。

「水平型」は、ChatGPTなどの汎用チャットボットや、Microsoft Copilotなどを全社的に導入する使い方です。米フォーチュン500企業の70%がMicrosoft Copilotを使用しています。
特定の業務プロセスに組み込む「垂直型」は、直接的な経済効果をもたらす可能性がありますが、導入は限定的です。

機能
研究開発

調達

サプライチェーン

営業・

マーケティング

カスタマーサポート

水平型用途

従業員用 Microsoft Copilot
汎用AIの個別利用(ChatGPT, Geminiなど)

垂直型用途

研究テーマ調査交渉エージェント供給リスク調査ツールメール・Web原稿作成ツール自動応答チャットボット
論文情報収集提案書作成ツール需要予測ツール市場調査ツール顧客対応支援アシスタント
企業全体および特定機能における生成 AI 使用例

機能別に見ると、生成AIの利用によって生まれる価値の75%は、「営業・マーケティング」「顧客対応」「ソフトウェア開発」「R&D」の4領域に集中していると指摘されています。

今後は、経済的な効果を期待できる「垂直型(機能特化型)」の生成AI導入を進めることが、戦略的に重要です。

出典マッキンゼー. エージェント型AI 時代の到来:企業 変革の新たな戦略, 2025
マッキンゼー. 生成AIの経済的ポテンシャル:次の生産性フロンティア, 2023

生成AIの具体的タスク ~ 業務でどう使えるのか?

生成AIの具体的なタスクとは、生成AIにどのような働きをさせるかという利用方法のことです。突き詰めると、知識取得・自動化の二つに分けられます。

知識の取得とは、仕事で必要なさまざまな知識を得ることです。例えば英単語のような一般的な知識が必要なこともあれば、自社の勤務規定や自社製品のマニュアルのような独自性・専門性が高い知識が必要なこともあるでしょう。業務に必要な知識は、特定の人の”頭の中”にあったり、探し出すことに手間がかかったりといった課題があります。本当に欲しい知識を、必要な時に、簡単に取得できるようにできること、そして、要約するなど人が理解しやすい形に整えてくれることが、生成AI活用の一つ目のメリットです。

仕事の自動化とは、例えば「会議の録音から議事録とTo Doリストを作成する」「お客様のコメントの内容を分類する」などのように、これまでは人の判断が必要だった作業や、臨機応変な対応が必要なタスクを自動的に行えるようになることです。人手不足の中でも、非効率な人海戦術で行われている仕事はまだまだ多く残っています。それらの作業をAIに代替させることで、人は人しかできない付加価値の高い業務に集中できるようになります。これが、二つ目の自動化のメリットです。

なお生成AIの答えには間違いが含まれる可能性があるので、知識取得・自動化のいずれの使い方であっても、あくまでも「前工程」で生成AIを使い、「後工程」で人が確認するなどのプロセスを整備する必要があります。

知識・知恵の取得

仕事の自動化

業務課題

知識を特定の人に依存、情報取得の手間(「あの人に聞かないと分からない」「資料探しに時間がかかる」)単純作業に手間が取られる「メール返信や文書作成に追われる」「単純作業だが人の判断が必要」

生成AIへの期待

欲しい情報を、いつでも簡単に、分かりやすい形で引き出せる人に代わって自動で対応してくれる

生成AIが行うこと

ユーザーの質問を理解し、膨大な情報を検索し、分かりやすく要約して答える曖昧な指示や長文でも文脈を理解し、下書き作成や判断などを自動で実行する

向いている業務

社内規定確認、製品FAQ、営業資料検索問い合わせ一次対応、分類、下書き作成
知識取得と自動化

これらのどちらか一方のみを目的とするのではなく、両方を狙った活用方法も多くみられます。

  • 仕事の自動化の例
    • 人事部門向け、求人票の自動生成: 人事担当者の業務負荷を減らすため、担当者は関連するキーワードを選択するだけで、企業の求人票を自動で作成。
  • 知識・知恵の取得の例
    • 金融市場分析・情報提供: 金融情報を提供するメディア企業が、蓄積した膨大な金融データを生成AIに学習させ、金融市場の高度な分析と情報提供を実施。
  • 仕事の自動化/知識・知恵の取得の例
    • 市場調査とキャンペーン企画: マーケティング担当者向けに、生成AIが市場の動向や消費者の反応、競合の活動などを分析し、マーケティング計画を策定。

生成AIのリスクとガバナンス

業務での生成AI利用のリスクには、主に、ハルシネーション・誤判定、バイアス、情報漏えい、生成AIの不正操作、著作権侵害の5つがあります。

生成AI利用のリスク

ハルシネーション・誤判定AIシステムが誤った結果を出力したり、もっともらしい嘘を生成したりするリスクです。
バイアス社会に存在しているバイアスをAIシステムが増幅するリスクです。
情報漏えい生成AIが応答の中に意図せず機密データを含めてしまうことで、プライバシー侵害などを引き起こすリスクです。
生成AIの不正操作巧妙な入力によって生成AIを操作し、LLMの意図しない動作を引き起こす攻撃です。プロンプトインジェクションとも呼ばれます。
著作権侵害AIの生成する文章や画像などが他者の著作権を侵害するリスクです。

これらの中でも、ハルシネーション・誤判定は発生頻度が高いので注意が必要です。AIは与えられた文脈に基づき、次に来る単語を予測する仕組みで動いています。また、質問された範囲・内容に忠実に答えを返そうとします。質問自体に思い込みや偏りがある場合、回答もそれに”引きずられて”、偏った内容になる可能性があります。生成AIを使う人が、質問する領域について知識が少ない場合には、回答の偏りに気づくことができません。例えば、日本語から英語への翻訳にしても、ソフトウエア開発のコーディングにしても、専門化によるレビューができない場合には、その業務プロセスに生成AIを組み込むのはリスクが大きくなります。

経営的な観点で「どうリスクを取っていくか」の判断が必要です。さらに、実務に落とし込める運用ルールも必要になります。

リスクを分析し、生成AIの効果との兼ね合いでどこまでのリスクを取るべきか経営的な視点で判断します。また、リスクを管理する方法も検討します。下記の例を参考に、自社にとってのリスクを分析してみましょう。

法的リスク

ビジネスリスク

リスク:高

・AIの生成物による著作権侵害
・生成AIを通じたデータ流出によるプライバシー侵害
・ソフトウェア開発に生成AIを利用することによる秘匿性の高いコードの漏えい
・カスタマーサポート用チャットボットの顧客への誤回答

リスク:低

・生成AIが作成した契約書のたたき台が不正確・生成AIによる、顧客ニーズにマッチしない商品提案
リスク分析マトリックス(例)
出典KPMG. AIにおけるセキュリティとは, 2025

結論

業務での生成AI活用とは、経営的な重要課題に対して、業務領域(Where)を見定め、どう使うか(How)を設計して運用していくことです。

ご相談無料。お気軽にお問い合わせください

執筆者

江成 太一

えなり たいいつ)

ソニー、日産自動車、MSDなどで、一貫してデジタルマーケティングに従事。
戦略立案から、企業Webサイト構築、SEO・検索広告・メールマーケティングなどのリード創出施策、インサイドセールス運営を実行。海外駐在も経験。

出典

  • 上田雄登. 60分でわかる! 生成AI ビジネス活用最前線. 技術評論社
  • 城田真琴. ChatGPT資本主義. 東洋経済新報社, 2023
  • にゃんた. ゼロからわかるDifyの教科書. 技術評論社


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